ごあいさつ
第66回現代書道二十人展を開催いたします。
本展では1957年(昭和32年)の創設以来、書壇を代表する二十氏に会派を超えてご参加いただき、筆意に満ちた力作をご出品いただいております。深遠なる書の伝統に基軸をおきながら、深い思索と研究の上に新たな芸術性を模索して、現代書壇最高峰の二十氏が筆をふるう本展は、多くの来場者を魅了してきました。
今回は、書道が世界に誇る日本の伝統文化として、登録無形文化財への登録決定後、初めての開催となります。書の奥深さや魅力をひとりでも多くの人に伝えることで、本展が悠久の歴史を有する書道文化のさらなる発展と次世代への継承に資するよう願っております。
漢字、かな、築刻など各分野をリードする現代書芸術の神髄、約90点がそろいました。二十氏の多彩な筆致と墨が織りなす鮮やかな世界を、心ゆくまでご堪能ください。
2022年(令和4年)新春
朝日新聞社
出 品 作 家 (五十音順:左←右)
書線は心臓の鼓動が生み出す軌跡であり、呼吸を形象化したものであると日々考えております。
ご存じのように書とは一回性の芸術でありますので、日頃より古典の臨書などの勉強を積み重ね、制作時の心の動きを如何にすれば筆と墨の力を借りて紙面に定着させることができるか悩んでおります。そして、当初の構想通り表現されることだけでなく、予期していなかった魅力のある線に出会えることを楽しみにして毎日研鎖しております。(井茂圭洞)
書は人間と同じように生きている。常に考えていることは、線の命と存在感、そして書の命。作品四点は、表面的には構造、趣きが異なるが書の本質を追求するという根源的なことでは変わりがない。
作品制作では、自らの足もとをチェックしつつ、書の深奥にある新たな扉を切り開くことに努め、まだ見ぬ世界の幻影を紙面に定着させるために挑戦を続けている。この歳になっても日々第一歩という感あり。(新井光風)
毎日が晴れ々々としない一年でした。心持ちとしては、作品制作意欲はあるのですが、いざ取り掛かると何とも気持ちがのってこない日々の連続でした。
我が人生で経験のない疫病の流行である。人類の長い歴史の中ではどうしても避けて通ることが出来ないことと、わかっているつもりでも現実は厳しいものです。
その中で、優雲華の花は三千年に一度開く、吉祥の花です。仏教語であるが、源氏物語にも登場している。コロナを払い得度させる勢いをもって書いてみた作です。(星 弘道)
二十人展の出品にあたり念頭においているのは、自分の持ち味を活かし、四作品それぞれ違った雰囲気の作となるようにすること、又強い線情と作中の余白を意識の根底に、自然な中に生きた白が表出できること、そして古筆のもつ品格の高さに少しでも近づけることを願って書作した。(黒田賢一)
二年続いている未曾有のコロナ禍、書作に対峙する難しさを実感させられた。
そんな中、作品制作の計画を立てる楽しさを味わう。随分鉛筆でデッサンを繰り返し、墨、紙を消費した。
今年は篆書、行草書、楷書を出品、一作毎に線の表情が変化するよう心掛けた。(髙木聖雨)
かつて二回ほど源氏物語をテーマに作品を書きましたが、故あって今回も源氏を取り上げました。過去が平安の雅「光」だとすると今回は「闇」です。作品『うつせみ』は光源氏と空蝉、二人を墨色の違いで表現したものです。作品『光源氏と藤壷中宮との贈答歌』は光源氏と藤壷中宮、向き合う二人に思いを馳せながら筆を進めたものです。千年前も今も同じ時間が流れているはずですが、当時の時間はゆったりと流れ夜の闇は恐ろしく深かったと思いす。作品『源氏屏風(Ⅱ)』は光源氏と女性達の織りなす恋慕、その折々に詠まれた贈答歌をひたすら書き続けたものです。(高木厚人)
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巡回展(会期・会場 2022年)
*東京展
1月3日(月)〜1月9日(日) 日本橋高島屋s.c.
*大阪展
1月12日(水)〜1月17日(月) 大阪高島屋
*名古屋展
1月22日(土)〜1月30日(日) 松坂屋美術館
*諸事情により、展覧会の中止や会期の変更となる場合があります。
主催 朝日新聞社
松坂屋美術館 (名古屋展)